*花は彼に恋をする*【完】
その話は突然で
信じたくない内容だった。
***
「…おい、野田…聞いたか?
1課の黒瀬課長が
近々お見合いするって噂らしいぞ?
……お前知ってたか!?」
ある日、社食で昼食中の私に
同期であり友人でもある
営業2課の三橋大志が
定食のトレーを持って隣に座ってきた。
「…はっ!?」
何の事かわからず私は
「…三橋、その話何!?
もう一度言ってくれる?」
と、聞き返すと
「…ああ、いいよ。」
三橋は箸を持ちながら
再度話の内容を教えてくれた。
それは、黒瀬課長が親戚の紹介で
近々お見合いをすると言う話だった。
「………。」
私は言葉が出なかった。
「…やっぱり知らなかったのか。
言わない方法もあったけど
他のヤツに聞くよりは
まだマシかと思ってな。
課長本人からじゃなくて
1課の先輩から聞いた話だけど
信憑性は…高いと思う。」
私が黒瀬課長を好きな事を
唯一知っているこの男は
申し訳なさそうな顔で話してくれた。
別に三橋…アンタが悪い訳じゃない。
でも、私はショックで
ご飯の味が良くわからなくなった。