*花は彼に恋をする*【完】
別に隠れなくても良かったのに
気がつくと私は咄嗟に隠れていた。
2人が通り過ぎるのを
私はジッと見ていた。
すると
「…そう言えば、黒瀬君。
君、お見合いをするんだってね?
この間出張に来た2課の子が
そのような事を話してたよ。
本当なのかい?」
関西の営業課長の大きな声が
嫌でも私の耳に入った。
「………。」
私は再び固まった。
どうなのか気になる話だけど
聞きたくない…恐い。
でも、私は息をひそめて
耳を傾けてしまっていた。
営業課長の質問に
黒瀬課長は苦笑いをしていたが
「…ああ、その事でしたら。」
と、口を開きかけた。
…お願い…黒瀬課長。
…この話は嘘だと言って。
…お見合いはしないって言って。
…間違いだって言って。
しかし、その願いは虚しく
「…ええ、まあ…その通りです。
僕も今年34歳になりますからね。
両親はあまり煩く言わないですが
どうやら、世話好きの親戚に
どうしてもと言われたみたいで。」
課長の返答が私の耳を通り
脳内に一字一句残らず入ってしまった。