*花は彼に恋をする*【完】
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「…どれも凄く美味いな。」
ワイシャツ姿の黒瀬課長は
黙々と箸を進めてくれていた。
「…本当ですか!?」
反応が気になって仕方なかった私に
「…ああ。本当に美味いよ。
優しい味わいで元気が出そうだよ。
野田さんは
仕事も料理もデキル女性なんだな。」
そう言って口角をあげながら
今まで会社では多分
見せた事のないような
極上の笑顔で私に微笑んでくれた。
…ドキッ。
その顔を見て、私の胸はさらに高鳴る。
….我ながら…頑張ったと思う。
卵焼き。
昨夜から下準備しておいた肉じゃが。
さっき購入した
ほうれん草で作った胡麻和え。
同じく購入した絹豆腐で冷奴。
ご飯にワカメのお味噌汁。
今日は最初から
家庭的な和食にしようと思っていた。
……良かった。
何だか心が温かくなる。
予想外の展開だけど
強い憧れと恋心を抱き続けて
私の中から風化してくれなかった
あの黒瀬課長が目の前にいる。
私のアパートで
私の作った食事を食べてくれてる。
……信じらない。
夢みたいだけど夢じゃない
そんな気持ちに包まれた。