*花は彼に恋をする*【完】

「……はい?」

何だろう?忘れ物かな?

首を傾げると

黒瀬課長が真面目な眼差しで

私を見下ろすと突然

「…野田さん、今思ったけど
今日…こうして俺を家に入れた事を
君の彼氏は……怒らないのか?」

と、口を開いた。

「……えっ!?彼氏!?」

驚く私に

「…ああ、彼氏は大丈夫なのか?」

課長はもう一度尋ねてきた。

『彼氏』

さっきまで舞い上がっていた

私はその言葉に一瞬固まった。

「……。」

呼び起こされたように

懐かしい複雑な響き。

忘れていた…ううん。

無理やり忘れようとしてきた事が

頭と心にフツフツと

よみがえってくるようだった。


そう言えば私は

この人を諦めようとしていた。

そう言えばこの人は

私の事を好きじゃなくて

別の人と…お見合いした。

「……。」

胸が締め付けられそうになる。


黒瀬課長こそ

その後どうなんですか?

あなたこそ私の誘いを受けて

私のご飯食べて

大丈夫だったんですか?

「……。」

泣きそうになる気持ちを抑え

私は首を横に振った。





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