*花は彼に恋をする*【完】
すると
彼は微笑みながら
「…良かった。」
そう言って掴んだ手を離してくれた。
「……。」
手を離されても
さっきまでの掴まれた感触と
まだ温もりが残る私の手は
自分の手じゃないように
熱くなりそうだった。
「…土日どちらか良い日がわかれば
電話でも、メールでも
どちらでもいいから連絡してくれ。
…拒否や無視はなしだからな?」
念を押された私は
「……はい。」
と、紅くなったまま頷くと
その承諾を受けて安心したのか
「…じゃあ、俺は本当に帰るよ。
今日はありがとう。
美味かった…ごちそうさま。」
そう言って
私の頭をふわっと撫でながら
優しい顔をして
「…おやすみ。」
囁くように言って靴を履くと
玄関のドアを開けた。
「…おやすみなさい。」
ドキドキの中で口から挨拶を紡げば
「…週末楽しみにしてるよ。」
そう言って私に手を軽く上げて
ドアを閉めた黒瀬課長は
…私のアパートから帰って行った。