*花は彼に恋をする*【完】
夢のような時間だった。
黒瀬課長とあのスーパーで出会えた。
私の作った夕飯を食べてくれた。
漆黒の瞳に見つめられ
手を掴まれて食事の約束まで…。
本当に夢じゃないかと思うくらいの
急展開に胸が今でもドキドキしてる。
でも、夢じゃないんだよね。
現実である証拠に
渡されたメモがちゃんと手元にある。
彼の携帯番号とメールアドレス。
報宣の時、社内携帯は知っていたけど
プライベートは勿論知らなかった。
私はラグに座ると
バッグから携帯を取り出した。
「…黒瀬…翔英…。
ヨシッ!…登録完了出来た。」
私の携帯に登録された黒瀬課長の名前。
携帯番号とメールアドレス。
確認する顔がにやけてしまいそう。
何度も確かめてしまいそうになる。
……嬉しい。
私に教えてくれたって事は
課長は私を嫌いじゃないんだって
少しだけでも期待してもいい?
少しだけ自惚れてみてもいい?
ふんわりと部屋に残った
黒瀬課長のコロンの香り
報宣にいた時から変わっていない
大好きなあの人の香り。
「…変わってないなぁ。」
あっ……でも。
私の中に疑問が浮かび上がった。