*花は彼に恋をする*【完】
その後も黒瀬課長は
会社帰りや週末のどちらかに
『野田さんの夕食を食べたい』と
アパートに来る事もあった。
時々メールもくれるようになった。
仕事の話や
他愛ない話をするだけだったけど
私には嬉しかった。
『…美味いな。』
私の作った食事を褒めてくれる
黒瀬課長の優しい声。
ドキドキするぐらい優しい笑顔。
報宣の課長代理だった
あの頃と変わらない
私の大好きな彼の声。
美味しそうに食べてくれる顔。
普段、会社では見れない
見れなかった優しい笑顔。
帰り際に“ふわっ”と
頭を撫でてくれる大きな手。
……やっぱり大好き。
封印していたあの頃の気持ちが
私の中で再びじわじわと
溢れ出している。
……でも、凄く気になる。
『お見合いする』って話は
結局どうなったんですか?
ここに来てくれるって事は
私を助手席に乗せてくれたのも
その人とは今は何でもないって
思っていてもいいですか?
聞こうか何度も迷った。
でも、聞いてしまって
もう来てくれなくなったらと思うと
怖くて聞けない。
三橋にだって…今さら聞けない。