*花は彼に恋をする*【完】
「……。」
私は直感していた。
きっとあの日だ…。
黒瀬課長から夕食の御礼にと
誘われた食事の日の事…。
それを…この子に見られてたんだ…。
廊下で話しているところまで…。
……気づかなかった。
私は動揺しそうなのを抑えつつ
「…付き合っていないけど。
あの日は偶然…。」
誘われたとは言わない。
でも、私は黒瀬課長から
『付き合おう』とは言われていない。
だから私達は交際ではないと思う。
だから
付き合っていないで正解だと思う。
すると
「…あぁ、良かった~。
『付き合ってる。』
なんて言われたらショックだし
それに黒瀬課長が
野田さんなんかと付き合ってたら
私は、黒瀬課長の人格を
疑っちゃいますからね。」
突然その女子社員は
嬉しそうな顔をしながら言った。
その瞬間
「……えっ!?ちょっと!」
私は今この子の口から
聞き捨てならない言葉を
聞いたような気がして
口を開き、語気を強めていた。