*花は彼に恋をする*【完】
傷ついた私にトドメを刺すように
綺麗な女性が黒瀬課長に
何かを聞いているのが聞こえた。
「…翔英は……好きなの?」と。
「………!!」
…頭を殴られたような気分だった。
女性がニコニコしながら
黒瀬課長を『翔英』と
下の名前で親しげに呼びながら
自分の事を好きなのかどうかを
確認しているのが
聞こえてしまったから…。
黒瀬課長…何て答えるの?
その女性に
『俺も好き』って答えるの?
…嫌!やめて!聞きたくない!
しかし、耳を塞ぐ余裕もなく
その問いに対して黒瀬課長は
その女性に苦笑いしながら
『…ああ…勿論…好きだよ。
いや…『愛してる』と
言いたいくらいかな。』
と…そう答えていた。
…“ガシャン”と
心の中のガラスが
音を立てて脆く割れた。
その瞬間……。
「…やだ!!」
私の口から
思わずそんな言葉が出てしまった。