*花は彼に恋をする*【完】

傷ついた私にトドメを刺すように

綺麗な女性が黒瀬課長に

何かを聞いているのが聞こえた。


「…翔英は……好きなの?」と。


「………!!」

…頭を殴られたような気分だった。

女性がニコニコしながら

黒瀬課長を『翔英』と

下の名前で親しげに呼びながら

自分の事を好きなのかどうかを

確認しているのが

聞こえてしまったから…。


黒瀬課長…何て答えるの?

その女性に

『俺も好き』って答えるの?


…嫌!やめて!聞きたくない!


しかし、耳を塞ぐ余裕もなく

その問いに対して黒瀬課長は

その女性に苦笑いしながら

『…ああ…勿論…好きだよ。
いや…『愛してる』と
言いたいくらいかな。』

と…そう答えていた。

…“ガシャン”と

心の中のガラスが

音を立てて脆く割れた。


その瞬間……。


「…やだ!!」


私の口から

思わずそんな言葉が出てしまった。















< 84 / 157 >

この作品をシェア

pagetop