*花は彼に恋をする*【完】
「……!?」
「….…はっ!?」
2人は驚くと同時に
私の方向へと視線を向けた。
黒瀬課長は目をパチパチさせて
「…野田さん!?」
私の存在を捉えた。
そして
「…えみか、ちょっと待ってて。
これ持っててくれる?」
そう言って
自分が持っていたビジネスバッグを
女性に預けると
「…野田さんじゃないか。
なぜここに…?
今帰りなのか…?」
こちらに歩み寄って来た。
…嫌、来ないで。
こんな惨めな顔を見られたくない。
声に出来ず、涙が頬を伝う。
「…野田さんどうしたんだ?
今、『やだ!』って…。
…何かあったのか?」
彼が私の前で立ち止まった。
私を見つめる視線に
いつもならドキドキして
嬉しくて仕方ないのに
今は突き刺さるように痛い。
私は無言のまま
涙を流しながら彼を見つめた。
戸惑ったままの黒瀬課長は
「…本当にどうしたんだ!?
何を泣いてるんだ…!?」
そう言って手を伸ばして
私の頭に触れようとした時
「…嫌!!触らないで!!」
私は自分でも驚くほど
声をあげて彼を拒絶した。