*花は彼に恋をする*【完】
「…えっ!?」
私からの拒絶に
黒瀬課長の手が止まった。
拒絶されるとは
思わなかったのかもしれないけど
引っ込みがつかず
拒絶された手をそのままに
彼が戸惑ったように私を見つめ
漆黒の瞳が困惑を浮かべていた。
…胸が痛い。
そんな顔をさせたかった訳じゃない。
でも、あなたは…。
その時
「……翔英?
もしかして、その子…。」
後ろから
黒瀬課長のバッグを持ったまま
あの女性が近づいて来た。
「…ああ、えみか。この子が…。」
黒瀬課長が女性をチラリと見て
『えみか』
そう発したのを聞いた私は
グサリと衝撃のトドメを刺された。
…もう、いい。
こんな所にいたくないし
惨めな想いはしたくない。
私は涙をそのままに
グッと手に力を込めると
「…黒瀬課長はその女性と
お見合いしてお付き合いしてるのに
私と食事したり、ご飯食べに来たり
期待…させるような事ばかりして…。
….課長なんて…大嫌いです!!」
そう言い放ち
辛うじて残っていた力を振り絞ると
彼とその女性に背を向けて
元来た道を走り出した。