*花は彼に恋をする*【完】
その時私は
ふと後ろに誰かの気配を感じて
後ろを振り向いた。
「……あっ。」
そう言いかけた私は
慌てて口を閉じて言葉を飲み込んだ。
なぜなら…あの人だったから。
久しぶりだなぁ…顔を見るのは。
あの人…来ていたんだ…。
でも、そっか…。
出席者が多くて気づかなかったけど
来るのは当たり前だもんね。
昔は私の職場の課長代理で
私の上司だったのに
今は営業部営業1課の課長で
次期営業総合部長候補で
高崎課長代理の上司で
いち早く
高崎夫妻の交際に気づいていたと
羽奈から聞いた事がある。
そんなあの人と私は今
こうして目が合ってしまった。
そして、あの人も私を見て一瞬
『…あっ。』
と言う顔をしているように見えた。
私は軽く会釈をした。
すると、向こうも口角を上げて
会釈を返してくれた。