~グラビアアイドルが芸能界でキラキラな恋に落ちちゃった場合~
しかし、男の目が自分からそれたその一瞬の隙をついて、司が駆け寄ってきて、ナイフを持った男の腕をつかんだ。

男が体勢を崩し、あたしをつかむ男の手が緩む。


あたしは、その瞬間に男を押しのけて、男から逃れた。

司は、ナイフをつかんだままの男ともみ合って。

ドカッ

と、男をなぐった。


男が後ろ向きに倒れ、司が「大丈夫か!?」とあたしの方に駆け寄ってくる。


「大丈夫だけど……」


あたしは、倒れている男の方に目を向けた。

スタジオの扉は男の奥にあるので、男がそこにいる以上、あたしたちは逃げられない。

男がむくっと体を起こし、ゆくりと立ち上がった。

司は、自分の後ろにあたしを隠すように立ち、小声であたしに言った。


「俺があいつを足止めするから、お前は、逃げろ」

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