~グラビアアイドルが芸能界でキラキラな恋に落ちちゃった場合~
「さて、ボートを乗りに行こうか」
立ち上がった上条さんから差し出された手に、
そっと手を重ねた。
手をつないでボート乗り場に行く途中、お互いの呼び方についての話題になった。
「デートなんだし、苗字に『さん』づけじゃなくて、名前で呼んでよ」
「えっ、でも、年上だし、呼び捨てはちょっと。司……さん?」
「さん付けは、ちょっとよそよそしいかな。もっと親しい感じがいい」
親しいカンジ?
それって、たとえば……
あだなとか?
あたしは、しばし考えて、こう答えた。
「じゃあ、つーくん」
「あはは、いきなり何だよ、それ!
つーくんって、それ、俺の子どものころのあだ名だ。
やめてくれよ、つーくんは」
結局、「司」と呼ぶことになって。
あたしのことは「まりん」と呼んでくれることになった。
敬語は禁止、の約束も。