雪の降る日
「おーい、椿?」
急に黙って固まった私に、匠は声をかける。
「…あ、うん」
「何黙ってんだよ。…あ、眠い?」
さっきの言葉にキュンとしたことは言わないでおこう。
彼はちょっと鈍感だ。
しかし、知られたらそれはそれでいじられるのが目に見えている。
「…あぁ、そうかも。暖かいし」
「じゃあ、寝るか。俺も眠くなってきた」
そう言って匠は見ていた雑誌をとじ、ベッドへ向かう。
私も飲み終わったマグカップを洗って、匠のいるベッドに入る。
ベッドに入った途端、本当に眠くなってきた。
そんな私に気づいた匠は、静かにそっと囁く。
「おやすみ、椿」
優しい声を聞き、彼の腕の中で私は眠りに落ちる。
今日は、あの日のように雪が降っていた。
この先も雪が降った日には、またあの日のことを思い出すのだろう……
* fin *
2014.2.9