彼となら、   熱くなれる
δ.嵐の中で
私は大学時代入っていた山岳部でOBだけが集まり、南アルプスへ登ることになった。

と言っても低い山だ。

8人のパーティーを組んだ。

在学中は毎年夏にその山へ行く常連で、山小屋の主人とも顔見知りになっていたからメンバー全員が学生に戻ったような気分で盛り上がった。

「珠良だけが獣医だなんて、変わっているよね。」

「まぁな、俺たちは人間相手だが。」

「何だよ、どっちも同じようなものだと思うよ。」

「人間は文句が多いけどな。」

「あっはっは。」皆で笑った。

大いに騒いだ。

翌日下山する予定だった。

ところが私だけ一人延長しなければならなくなった。

山小屋で飼っている犬が難産だったため、私だけ残った。

「じゃ、珠良、私達は先に下りるわね。」

「しっかりな、獣医殿。」

「また来年来よう。」

皆は下山した。

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