彼となら、   熱くなれる
「申し訳ないな、珠良ちゃん。」

「でも助かるわ、珠良ちゃんが獣医さんで。」

山小屋のご主人と奥さんが言った。

ここで働くことになろうとは思っていなかった。

幸い犬の難産も無事済み、5匹の子犬たちも元気だった。

私はもう1泊させてもらうことになった。

母犬の様子も幾度か診た。

「今晩は!変わりないですか?」

夕暮れに山小屋を訪ねてきたのは山岳警備隊の隊員だった。

森下敬吾と名乗った。

「へぇ、君獣医さん?」

森下さんはこの辺りを歩いてパトロールしていた。

山小屋のご主人とも顔なじみらしかった。

犬が難産を乗り越えられたのは私のお陰だとご主人はしきりにしゃべって私を彼に紹介した。

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