彼となら、   熱くなれる
「朝の空気は格別でしょう?誰もが吸えるものじゃないですよ。」

「そうですね。とってもすがすがしくてみずみずしくて、呼吸するたびに肺の中が満たされるようです。新鮮な酸素が血流にのって体のすみずみにまで行き渡るのが感じられます。」

「あっはっは、随分と詳しくおっしゃる。先生の講義を聞いているようです。」

私たちは軽く笑いながら歩を進めた。

遠くで音がした。

「何かしら、あの音?」

「ああ、滝ですよ。渓谷があるんです。そこにも寄りますよ。」

滝の音がいきなり近くなった。

「なんて素敵な所かしら!」

「初めてですか?」

「はい。」

と何かに足元を取られた。

「やだ、何かしら?」登山靴に何かが絡まってしまった。

「釣り糸?」

「テグスです。最近の登山客はマナーが悪くて困っているのですよ。」

「ひどいわ、こんな所にまで。」

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