彼となら、   熱くなれる
「先生?守口先生?」

「・・・・・」

私は彼に呼ばれていることはわかっていたが返事が口から声になって出てこなかった。

「来て、ほら。」

言われるまま私はベンチに座る彼の前に立った。

「大丈夫、怖くない、音だけだ。」

「・・・・・」

彼は私の目尻にたまった涙を指でぬぐってくれた。

「でも、でもね、あんなに鳴ることないじゃない?」

彼はベンチから立ち上がってギュッと私を抱き締めた。

彼の温かい胸と力強い腕の中で私の震えが止まった。

私の背中を優しく撫でて言った。

「そうだよな、あんなにドデカク鳴ることないのにな。さ、座って。少しは落ち着いただろ?」

「ん、ありがとう。」

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