彼となら、   熱くなれる
「昼にしよう。何が食べたい?」

「食欲ないわ。」

「君の聴覚は恐怖を感じる神経と直結しているな。」

「どうかしら?」

「いつ流されてもいいように、何か口に入れておくんだ。」

森下さんは登山靴の雨水をぬぐって履いた。

そして紐をきつく締めた。

伏せた長いまつ毛が雨に濡れてツヤっぽかった。

山岳警備隊とレスキュー隊とは違うと彼が言っていたが、もし他の登山パーティーがどこかで立ち往生していたら、彼は私をここに置いて救助に向かうのだろうか。

着信「こちら森下。了解。これから向かいます。」

私の予感が当たった。

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