彼となら、   熱くなれる
次に私は肩を打った男性を診た。

「大丈夫。脱臼はしていないから腕を吊って肩に負担をかけないようにしましょう。筋肉が静まれば痛みも引くし、動かせるようになります。あなたは今だけ痛み止めを飲んで様子をみてください。アレルギーはありますか?」

「いいえ。」

「6時間経ってまだ痛むようでしたら、もう1回飲んでください。痛みは我慢しないでくださいね。」

「先生、次、俺。俺を診てください。」

「はい、どうされましたか?」私は3人目を診た。

「この辺が痛いんです。」

「頬が切れているわ。少ししみますよ。」

私は丁寧に血をぬぐってカットバンを貼った。

「俺も痛み止めを飲んだ方がいいかな?」

「えっ?」

「先生の困った顔がすっげいいな。俺、先生のことを好きになってもいいですか?」

「困った患者さんね。雷に打たれた方がいいかもしれないわね?」

「あっはっは。」6人で笑った。

狭い小屋が窮屈になったが、この状況で笑える余裕ができたことが嬉しかった。

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