彼となら、   熱くなれる
私はソファから立ち上がった。

「珠良、待って。」

「何?」

「俺の中には常におまえがいて、決して消せない。それはたぶん将来誰かと結婚したとしてもだ。俺は心の中でおまえのことを一生引きずって生きていく覚悟でいる。それにおまえにも普通に結婚をしてもらいたい、好きなヤツと。おまえを好きでいてくれるならいいじゃないか。俺のことは胸の奥で想ってくれればいい。そうなることが一番いいんじゃないのか、そう思わないか?」

「私、ちゃんとわかってる。わかっているのに前に進めないの。わかっているのに兄さんと離れられないの。」

「・・・・・」兄は黙ったままだった。

きっと私と同じ想いだから何も言えないのだ。

「珠良、帰った方がいい。今日は咲良のお祝いだ。親父のことだ、またお袋の話しをするに決まっている。おまえ、ちゃんとしていられるのか?絶対に崩れるなよ、わかったな?」

「うん、大丈夫よ。私だってそれくらいちゃんとできるわ。」

私は帰って支度した。

ランチは都内のホテルでだった。

私は気丈に振舞った。

父と姉は何も知らないのだから。

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