彼となら、   熱くなれる
私は山のパトロールで昼間不在の森下さんとは夜しか一緒の時間を過ごせないとわかっていたので、レンタカーを借りてあちこち一人で見て回った。

ふもとの町は小さいけれど、このシーズンは観光客で混んでいた。

近くに貸し別荘も沢山あったからなのか、こんなに人が歩いているとは思わなかった。

私もぶらぶら歩いてショップをのぞいたり、景色のいい高台や湖をながめたり、ホテルで静かに本を読んだり、とてものんびりできた。

OBの登山パーティーは2日目に解散した。

登った初日いつもの山小屋に泊まったら、昨年生まれた子犬たちは5匹とも元気いっぱいだった。

この2週間はホテルに滞在するので自分のスケジュールを立てていた。

ある日、ホテルへ戻りがてら山岳隊の本部前を通った。

ちょっと寄ってみようと思い、車を停めた。

駐車場には白いバンが1台、他の4WDの中に停めてあり目立った。

よく見ると久保動物病院と車体に記されていた。

「何かあったのかしら?」私は本部の二重ドアの中へ入った。

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