彼となら、 熱くなれる
「君になら話してもいいよ。麻里という幼なじみだった。高校まで同じだったが別々の大学へ進んだ。僕が山の仕事に就いた頃、同窓会でこっちに帰った時に再会した。それからしばらく付き合っていたんだ。あの冬のことは忘れられない。仲間12人で滑りに行ったんだ。あの夜、散々飲んだ後、全員でナイターに出た。しらふでいるヤツは誰一人としていなかった。僕はもっと注意すべきだった。危険区域が何ヶ所もあったんだ。3人が落ちていった。2人は骨折で済んだが、麻里はだめだった。一瞬だった。3人が空中を飛んでいったのを見ているしかなかった。僕は悔やんでも悔やみ切れず、仕事も手につかなかった。山に入ると思い出すんだ。過去に戻ってもう一度やり直すことができたらと。それ以来何年も同窓会には出なかった。ところが、その中の一人が会いたいと言ってきた。彼は麻里と恋人同士だったと、彼女は自殺したのだと言ったんだ。遺書が出てきたと。恋人が一言の理由もなく、親が決めた縁談で結婚したことを苦に思い、自ら身を投げたと、彼の目の前でだ。そう言っていた。僕が彼女の死を悔やむのは筋違いだと。僕はそれを聞いても変わらなかった。苦しかった。」