彼となら、   熱くなれる
「そうだったの。そんなに大変なことがあったなんて、私、何と言えばいいかわからない。」

「そのすぐ後、君に出会った。あの豪雨の中を下山できたことに、君を守れたことに胸がいっぱいになった。古いレスキューの小屋は6ヶ所あって、その内5ヶ所が流された。残った1ヶ所も取り壊されて全部新しく建て替えたんだ。君には言わなかったが、あの夜あの小屋で寝ていたら二人とも小屋ごと流されていたかもしれなかった。」

「なんてこと。」私はそれを聞いて涙ぐんでしまった。

「今の僕は麻里のことで立ち止まっていた自分を踏みしめることができて、僕にできることを精一杯やること、それが目標になった。この仕事をつらいとは思わない。本当につらいこととは大切なものを失って初めて思うことだ。常に現実から目を離さずに生きていけたらいいと思う。」

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