星になれたら。
それは無理だ。
結衣の死亡は既に確認されもうまもなく母親に娘の訃報が知らされるだろう。
可哀想だがもう魂を返してやることは不可能だった。
やるせない想いを抱きながら杉本はすがりつき震える結衣の肩にそっと手を置いた。
見上げた結衣の瞳には止まる事の無い涙。
こんな姿を見れば断る事など出来ない。
意を決して杉本は口を開いた。
「魂を返す事はもう出来ませんが、時間を巻き戻す事は出来ます。一週間与えるのでその間に心残りを解消してください」


結衣達の暮らす部屋のすぐ傍に植えられている木の一番太い枝の上に座り杉本は深い溜め息を吐いた。
あの後、結衣の時間を一週間巻き戻した杉本は一端天界に戻り上司に事情を説明した。
天使に上司なんているのかと思うかもしれないが、仕事があるのだから、上司だっているのだ。
上司が仕事を与え、部下はそれに従い給料を受け取る。
人間でいう社会人の様な物だ。
因みに死神も同じシステムになっている。
それはともかく、杉本は事情を説明した。
そして大目玉を喰らったのだ。
その上向こう一年間減俸の処分を下されてしまった。
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