雪恋ふ花 -Snow Drop-

——— 翌朝。


珠は布団の中で、伸びをしようとして、体のあちこちが痛むのを感じた。
その瞬間に、昨日の記憶が蘇る。

慌てて隣を見ると、春人はまだぐっすり眠っていた。
なんとなく顔を合わせるのが恥ずかしくて、洗面道具を持って、部屋を出る。

珠が部屋を出ていく音で、春人は目を覚ました。
身支度を整えると、二人分の布団を押入れにしまい、こたつを元の位置に戻すと、一気に昨日の夜のことを思い出す。


こたつでほとんど服も着たままとか、ティーンエージャーじゃあるまいし、ほんと、ありえないよな。
慌ててこたつの上に置いた財布を確かめて、胸をなでおろす。
最低限のエチケットは守れたみたいだが、珠と合わせる顔がなかった。

珠は怒っているだろうか……。


春人が洗面所から戻ると、着替えと化粧をすませた、珠が縁側のソファーに座っていた。


「おはよう」

春人が声をかけると、珠のぎこちない返事が返ってきた。

「おはよう」
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