雪恋ふ花 -Snow Drop-
「あの……」
意を決して、春人が口火を切ろうとした時、抜群のタイミングで電話が鳴る。
春人が電話を取ると、朝食の呼び出しだった。
「とりあえず、食べに行こうか?」
「うん」
食堂でも、二人は口数が少なかった。
春人はそっと珠の様子を観察していたが、珠の気持ちは全く読めなかった。
「今日は滑るの、お昼まででもいい? 日曜で高速混みそうだから、早目に出ようかと思って」
「うん。春さんのいい時間で」
「じゃあ、お昼食べたら、帰る用意しよう」
「うん、わかった」
全く弾まない会話に、春人はため息をついた。
部屋に戻って、ウェアに着替えて、荷物を広間におろし、チェックアウトの手続きをする。
「コーヒー、飲んで行こうか?」
「え?」
「いつか話した蔵で」
「うん」
やっと、珠がかすかに微笑んだ。