雪恋ふ花 -Snow Drop-

大阪に着いて、珠は自分の部屋に帰ると言った。
部屋に残した荷物を引き上げるために、春人の部屋に寄ったが、春人はひきとめず、黙って珠を送っていく。



一人の部屋に戻った珠は、これまでの賢との4年間と、春人と出会ってからの2か月を思い出していた。


それからの数日は卒業式やら謝恩会やら友達とのお別れパーティで、慌ただしく過ぎていった。


まだ春人に会う自信がなくて、引っ越しの前の晩に電話で春人と話した。
電話から聞こえる春人の声はやっぱりあたたかくて、優しくて、このままこの人に寄りかかることができたら、どれほどいいかと珠は心が揺らいだ。


珠はまだ、就職が決まっていなかった。
それも春人とのことを考えるストッパーになっていた。
将来のこともきちんとできないまま、ちゃんと働いている春人とつきあっていく自信がなかった。

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