雪恋ふ花 -Snow Drop-

その言葉を聞いて、春人は満面の笑みを浮かべた。


「ありがとう」

「えっ?」

「僕の想いを受け止めてくれて」

「春さん……」


春人は立ち上がって、ここが珠の実家であることも忘れて、珠を力いっぱい抱きしめていた。



「それで、自分のことって?」

春人は腕をゆるめて、珠を見下ろしながら聞いた。



「私、実はまだ就職が決まってなくて」

「ああ」

春人は急に深刻な顔になる。


「でも、四月からアルバイト探してたらね、ちょうど目指してた児童館の募集があって」

「うん」

「また、大阪で一人暮らしすることになったの。それでね、一緒に住む所、探してもらいたいなあって」

「あのさ、いい物件知ってるんだけど」

春人がいたずらっぽく笑って言った。


「えっ、ほんと?」

「これから、案内するよ」


< 129 / 146 >

この作品をシェア

pagetop