雪恋ふ花 -Snow Drop-

春人が連れて行ったのは、自分のマンションだった。

「ここは、春さんの部屋でしょ?」

「うん」

「このマンションに空き部屋があるということ?」

「いいや。ルームシェアしよう」

珠は言葉を失った。


「シェアって言うか、これって、同棲じゃない?」

「気になるなら、共同生活って、言ってもいい。家賃も生活費も折半なら、かまわないでしょ?」

「でも……」


春人が後ろから珠を抱きしめる。

「ほんとはね、一緒にいてくれるだけで、いいんだけど、それじゃあ、珠がいやでしょ?」

「……」

「後は家賃の代わりに、毎晩、身体で払ってもらうってのも、ありだけど?」

「な、なに、言ってるの!」

珠が振り払おうとした手を、春人がさらにぎゅっと握りしめた。


「ウソだよ。もう、珠と一緒に出かけたり、こうやって過ごすのに理由なんかいらないんだもんね。いつだって、好きなだけ抱きしめられる」

そう言って、春人がくるりと体を回して、またぎゅっと抱きしめた。


「ねえ、今から買い出しに行こうか?」

「今日?」

「ダメ?」

「だめじゃないけど……」


なんだか、すっかり春人のペースに引っ張られている気がする。

それでも新生活の準備は楽しくて、二人であちこちのお店を見て回った。

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