雪恋ふ花 -Snow Drop-

春人のマンションは2LDKで、一部屋は客間にしていて、ほぼ荷物は置いていなかった。
もともと洋服の少ない珠には、備えつけのクローゼットで十分だった。
小物用のプラスチックケースをいくつか買って、クローゼットの足元に入れることにした。

ライティングビューローは気に入ったものが見つかった時に、春人がプレゼントしてくれることになった。
珠が適当に選ぼうとしたら、一生ものだから、じっくり決めようと春人が言ったのだ。
当面は折りたたみの座卓を貸してくれるという。


台所その他共用スペースのものは必要ないので、結局、引越荷物も手で持ってこられそうだった。
引越は次の週末と決まった。
春人が車で実家まで来てくれる。


何軒もの店をあちこち見て歩いているうちに、すっかり夕方になっていた。

春人が夕食を作ると言い、近くのスーパーで食材を買って、春人の部屋へ戻ってきた。


「あの、家事はどうしよう?」


珠がおそるおそる相談すると、春人は料理を引き受けると言ってくれて、珠は心底ほっとした。


「じゃあ、私、掃除と洗濯する」

「休日に布団干すのとゴミ出しはやるよ」

「だったら、食器洗う」

そこまで聞いて、春人がクスッと笑った。


「どうかした?」

「なんか、一生懸命だと思って」

「だって、これからお世話になるから、ちゃんと家事も分担しないと」

「お世話になるんじゃない。これからは対等なパートナーだ」

そんなふうに考える春人が好きだと、珠はあらためて実感していた。

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