雪恋ふ花 -Snow Drop-
今夜の夕食は、春野菜のパスタ。
菜の花やアスパラガス、緑の野菜がたっぷり入った、女子向けのメニューだった。
「春さん、献立はいつもどうやって決めるの?」
「まあ、スーパーに行ってから決めることも多いけど、なんで?」
「だって、こんなのちゃちゃっと作っちゃうなんて、ほんと尊敬しちゃう」
「そう? それは光栄です」
春人がおどけて、かしこまった礼をした。
できあがったパスタは見た目も美しく、味も申し分なかった。
食器もスタイリッシュで、カトラリーはピカピカ、ランチョンマットはパッチワークになっていた。
生活の質が全く違う気がしていた。
「珠、何考えてる?」
突然、春人に聞かれて、珠は慌てる。
「さっきから、ずっと考え込んでるでしょ? やっぱり、一緒に暮らすのは気がすすまない?」
「違うの、そうじゃなくて……」
「じゃあ、何?」
「春さんと、あまりにも、違うなって。ついていけるかなって、考えてた」
「無理してあわさなくていいよ。好きなようにしてくれたらいいし、気になることがあるなら言って。なおすようにするから」
うつむいていた珠が、静かに聞いた。
「春さんは、私のどこが好き?」