雪恋ふ花 -Snow Drop-

春が立ち上がって、テーブルをまわってくる。


「こっち、おいで」

そう言って連れていかれたのは、リビングのソファーだった。
春人の膝の上に抱えられる。

「好きなところは、ありすぎて困るんだけど、どんなことにも前向きなことでしょ」

「能天気なだけ」

「素直なところ」

「わがままも言うもの」

珠はいちいち反論する。


「それから、辛くても涙こらえて笑っているところも好きだ」

「やせ我慢だし」

「あぁでも、泣き虫なところも実は好きだから、これからも泣きたいときは泣いていいよ。守ってあげたくなる」

「もう、いい」

珠は春人の言葉をさえぎった。


「そんなの、全部、春さんがいいように言ってくれてるだけでしょ?」

「そんなことないよ。どう言ったら、納得してくれる?」

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