雪恋ふ花 -Snow Drop-
30分後、腕時計のアラームで、春人は目を覚ました。
お手洗いを済ませて、眠気覚ましのコーヒーを飲んで戻ってみても、珠は熟睡していた。
見知らぬ土地に一人残され、どれほど心細かったことか。
安らかとは言い難い寝顔に春人は複雑な思いでいた。
春人は静かに車を発進させた。
いつもと変わらない、静かな車内。
助手席で丸くなって眠る珠の姿は、春人の心にあたたかい気持ちを起こさせていた。
車はそのまま走り続け、途中の休憩でも、珠は全く目覚める気配がなかった。
春人の自宅の最寄りのICを降りても、珠は熟睡している。
住所を聞いていなかったので、春人は自宅へ向かった。