雪恋ふ花 -Snow Drop-
「そろそろ、料理、注文しないか?」
春人が話題を変えたくて言ってから、ふとテーブルを見ると、二人分の料理が並んでいる。
「おまえ、二人分、食うつもりだったの?」
「うん」
「うんって」
「1時間待ってたんだけど、賢ちゃん来ないから、一人で全部食べちゃおうって。だって、もったいないでしょ?」
「いや、おまえ……」
「わ、これって、スペシャルコースよね? ハルったらケチだから、一番安いコースにしようとか言うんだもん。これ、私がいただいちゃってもいいかしら?」
「もちろん」
「じゃあ、俺もスペシャルコースにするよ」
「シャンパンもね。珠ちゃんも飲む?」
珠のさっきまでの沈んだ気持ちが、すっかり明るくなっていた。