雪恋ふ花 -Snow Drop-
「あの、お邪魔じゃなかったですか?」
おそるおそる聞く珠に、首を傾げていた麗子が、その意味に気づくとケラケラと笑い出した。
「ぜーんぜん、心配しなくていいの。だって、こう見えても、私人妻だから」
麗子が左手の指輪を見せた。
「えっと……」
珠が返事に詰まっていると、春人がムッとして答えた。
「変な想像すんな。ただの同僚だ。今日は送別会の下見に来ただけ。不倫とかじゃないからな」
そこまで言われて、珠はやっと安心した顔をした。
「珠ちゃんって、かわいい。ハルのこと気になるんだ」
麗子のからかいに、珠がドギマギする。
「ばか言うな。こっちも彼氏持ち」
「なぁんだ。残念だったね、ハルに"春"はまだ来ないのか」
「よけいなお世話だ」
珠がクスクスと笑い出す。