雪恋ふ花 -Snow Drop-

「そうだ、あれ、歌おっか。せっかくだしね」

そう言うと、麗子は勝手にハッピーバースデーを口ずさむ。
春人も渋い顔で、歌い始めた。


「珠ちゃん、ろうそく消して。消す時に、願いごとするんだよ」

ろうそくが消えると、麗子は手をたたいて、はしゃいでいる。
珠もつられて、笑い出す。


「これ、すっごくおいしいね」

麗子がパクパクとケーキを頬張ってると、珠が改まって言った。


「今日は、ありがとう。すごく楽しい誕生日だった」

「そう? だったら、良かったわ」

「お料理も無駄にならなかったし。こんなおいしいお料理、残すなんて申し訳ないもの」


その一言を聞いて、春人は何かでなぐられたような気がした。
こいつはこういうやつなんだ。

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