雪恋ふ花 -Snow Drop-
助手席でペラペラ話続ける麗子と、優しいあいづちをうつだんなのやりとりを半分聞きながら、春人は物思いにふけっていた。
今日、こいつはどんな思いで待っていたのだろうか。
絶対に来ることを信じていたのか、それともあきらめながら待っていたのか。
1人でどんな気持ちで料理を食べていた?
家族と来る大切な店を紹介しようと思って、裏切られた気持ちは?
考え始めると、きりがない。
「う……ん」
腕の中で珠が身じろぎし、春人の胸に顔を寄せる。
今日はやすらかな寝顔だった。
せめていい夢を見ていてほしい。
気がつくと、バックミラー越しに麗子と目が合った。
「ハル、その子のこと、守ってあげなよ」
「え?」
「なんか、大変そうじゃない」
春人は答えることができなかった。