雪恋ふ花 -Snow Drop-

助手席でペラペラ話続ける麗子と、優しいあいづちをうつだんなのやりとりを半分聞きながら、春人は物思いにふけっていた。

今日、こいつはどんな思いで待っていたのだろうか。
絶対に来ることを信じていたのか、それともあきらめながら待っていたのか。
1人でどんな気持ちで料理を食べていた?
家族と来る大切な店を紹介しようと思って、裏切られた気持ちは?
考え始めると、きりがない。


「う……ん」

腕の中で珠が身じろぎし、春人の胸に顔を寄せる。
今日はやすらかな寝顔だった。
せめていい夢を見ていてほしい。

気がつくと、バックミラー越しに麗子と目が合った。

「ハル、その子のこと、守ってあげなよ」

「え?」

「なんか、大変そうじゃない」


春人は答えることができなかった。

< 59 / 146 >

この作品をシェア

pagetop