雪恋ふ花 -Snow Drop-
ついでだからと、麗子は春人の家まで送ってくれた。
車の中で、春人が思い出していたのは、珠のはにかむような笑顔だった。
俺は少しは、彼女の慰めになったのか?
珠は、ベッドの上で寝たふりを続けていた。
誕生日に賢と言い争いたくはなかったから。
このまま、朝まで起きなければ、幸せな思い出だけが残る誕生日にできるから。
しばらくして、賢が黙って出て行った。
そのとたん、体から力がふっと抜けて、珠はそのまま朝まで目覚めなかった。