雪恋ふ花 -Snow Drop-
春人は街中で聞き覚えのある声を耳にして、振り返った。
甲高くて、軽薄な笑い声。
けれども賢の隣にいるはずの人物はおらず、代わりに腕にしなだれかかるように歩いているのは、髪の長い派手なミニスカートとピンヒールのブーツをはいた見知らぬ女性だった。
賢と目があった瞬間のばつの悪そうな表情。
それが全てを物語っていた。
すれ違う時、春人は軽く黙礼して通りすぎた。
春人が考えていたのは、またあいつが悲しむのかということだった。
どうしてこう、見たくもないものばかり見てしまうのか。
春人は思わず、ため息をついた。