雪恋ふ花 -Snow Drop-

「あの、迷惑じゃなかったら、これ……」

珠が気まずい雰囲気をうちやぶるように、小さな紙袋を差し出す。

「ん?」

「もらってください」

「いや、だって、これは……」

春人は慌てた。
だって、彼氏のために作ったものだろ?


「もう、渡せそうにないから……」

珠は今にも泣きそうな顔をしていた。

「賢ちゃんのために作ったもの、押しつけるなんて迷惑ってわかってるけど、このまま家に持って帰りたくなくて……」

「迷惑なんかじゃない。俺がもらっていいのかって、迷ってただけだ。でも、喜んでもらうよ」

春人が紙袋を受け取ると、珠がほっとした顔になる。


「ここで開けてもいいか?」

「え?」

驚いた目で春人を見る。

「だめ?」

春人はわざと、甘えた声で言ってみた。

「あの、ぜんぜん、上手じゃなくて、ずるしてキット使ったし、それに……形とかゆがんじゃってるし、味もおいしかどうかわからなくて……」

一生懸命、説明する珠がかわいくて、春人は思わず、頭をぽんぽんとたたいた。

「いいよ。形や味なんて。珠ちゃんの愛情がたっぷり詰まったチョコ、食べてみたい」

春人はそっと包みを開いた。
横で珠が真っ赤になって見ている。
小さな箱の中に4つのトリュフが入っていた。
白と茶色と、ピンクが2つ。

「へえ、うまそう。ちゃんと、上手にできてるよ。帰ったら、ゆっくりいただくよ」

< 68 / 146 >

この作品をシェア

pagetop