雪恋ふ花 -Snow Drop-
「あの、迷惑じゃなかったら、これ……」
珠が気まずい雰囲気をうちやぶるように、小さな紙袋を差し出す。
「ん?」
「もらってください」
「いや、だって、これは……」
春人は慌てた。
だって、彼氏のために作ったものだろ?
「もう、渡せそうにないから……」
珠は今にも泣きそうな顔をしていた。
「賢ちゃんのために作ったもの、押しつけるなんて迷惑ってわかってるけど、このまま家に持って帰りたくなくて……」
「迷惑なんかじゃない。俺がもらっていいのかって、迷ってただけだ。でも、喜んでもらうよ」
春人が紙袋を受け取ると、珠がほっとした顔になる。
「ここで開けてもいいか?」
「え?」
驚いた目で春人を見る。
「だめ?」
春人はわざと、甘えた声で言ってみた。
「あの、ぜんぜん、上手じゃなくて、ずるしてキット使ったし、それに……形とかゆがんじゃってるし、味もおいしかどうかわからなくて……」
一生懸命、説明する珠がかわいくて、春人は思わず、頭をぽんぽんとたたいた。
「いいよ。形や味なんて。珠ちゃんの愛情がたっぷり詰まったチョコ、食べてみたい」
春人はそっと包みを開いた。
横で珠が真っ赤になって見ている。
小さな箱の中に4つのトリュフが入っていた。
白と茶色と、ピンクが2つ。
「へえ、うまそう。ちゃんと、上手にできてるよ。帰ったら、ゆっくりいただくよ」