雪恋ふ花 -Snow Drop-
春人が鞄からおにぎりを取り出す。
「もしかして、手づくり?」
「そうだよ」
「わぁ」
珠はおいしそうに、おにぎりにかぶりついた。
「見て、すっかり雪国だ」
「ほんと」
朝日に輝く車窓を眺めながら、二人の心は高揚感にあふれていた。
スキー場に着くと、仮眠室で着替える。
珠のウェアを見て春人が目を見開いた。
「ウェア、買ったのか?」
「この間のは友達の借り物だったから」
「すごく似合ってるよ」
「ありがと」
そして、珠はまた、賢のことを思い出していた。
ヘアースタイルを変えても、どんなにおめかししても、ほめられたことがなかったことを。
板を持っていない珠はレンタルショップで、カービングスキーを借りた。
こんな時も、賢だったら、絶対に嫌な顔するのに。
気がついたら、賢と春人を比べていた。