雪恋ふ花 -Snow Drop-
準備運動をしっかりして、いよいよ板を履く。
珠がモタモタしている間に、春人はすっかり準備が整っていた。
「ブーツの底の雪、ちゃんとはらわないとだめだ」
珠の腕を持って、春人がストックでブーツの底をカンカンとたたいてくれた。
「じゃあ、始めようか?」
まだ朝が早いため、リフトも空いていた。
春人は初級コースが多いスキー場を選んでくれていた。
ファミリーゲレンデで足慣らしをして、さらにリフトを乗り継いで、てっぺんへのぼる。
美しい眺望をしばらく楽しんで、滑り始める。
春人は途中で止まりながら、ゆっくり滑ってくれた。
「今日の目的は、スキーを楽しむこと」
「え?」
「せっかく、こんな風景の中にいるんだからな」
春人の言葉に、珠は一瞬、ぼんやりしてしまう。