雪恋ふ花 -Snow Drop-

昼食はゲレンデ内のレストハウスで取った。

周りの人にはやっぱり親子にしか見えないのだろうか?

珠は自分の中に芽生える感情を必死におさえこもうとしていた。
春人はパラレルを教えてくれているだけ、バレンタインのお返しに連れてきてくれただけ、何度も言い聞かせても、心が勝手に走り出す。

一方、春人もスキーのこと以外を極力考えないようにしていた。
珠が来たのはスキーがうまくなりたいため。
それも、彼氏の賢と一緒に滑るためなのだと。

昼食後、再びゲレンデに出て、コースを流しながら、春人の指導は続いた。
バスの出発が16時なので、スキーは14時半にあがることにした。

珠のパラレルはまだまだだったが、気心の知れた人と一緒だと、スキーがこんなに楽しいものだとは思わなかった。
でも、自分の相手をしていた春人は楽しめたのだろうか。
1人なら上級者コースにも行ける腕前なのに。

けれども春人は一度もつまらなさそうな顔をしなかった。
それが本心だったら、うれしい。
でも、真実は?

珠の心はパラレルターンのように、激しく左右に揺れ動いていた。


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