雪恋ふ花 -Snow Drop-
日帰り温泉で入浴を済ませ、体がぽかぽかになる。
荷物をまとめて春人の元に戻ると、春人がやさしく微笑んだ。
「ほっぺた、いい色してる。疲れとれたか?」
「うん」
バスの中で食べる軽食を買ってから、二人はバスに乗り込む。
往路と違って、外はまだ明るいので、車内は楽しいおしゃべりの声で弾んでいた。
春人と珠もしばらく会話していたが、珠が眠そうな顔をしているのを見て、春人が言った。
「いいぞ。無理しなくて」
そう言って、春人が優しく頭を膝にのせてくれた。
春人が相手だと警戒心が全く感じられない。
「おまえって、ほんとネコみたいだな」
春人がクスクスと笑って、「タ~マ~」と呼びながら優しく髪をなでた。
「今、ネコみたいに呼んだ。その呼び方はだめ」
「はいはい」
春人がまたクスクスと笑い出す。