雪恋ふ花 -Snow Drop-
背中をぽんぽんとたたいてくれる手が優しくて、珠はいつしか眠りについていた。
「無邪気な顔して、罪作りなやつ」
春人のつぶやきも珠には聞こえていなかった。
2時間ほどして、珠がパチリと目を覚ました。
春人がクククと笑っている。
「どうしたの?」
「かつおぶしの匂いに反応するネコみたいだと思って」
言われている意味がわからず、むくっと起き上がると、近くの席から食べ物のいい匂いが漂ってきた。
「別に、そういうわけじゃ」
「は~い。ご飯の時間ですよ」
春人がふざけている姿を見て、珠は新鮮な驚きだった。
大まじめなだけの人だと思ってたけど、こんな一面もあるんだ。
今度は珠がクスっと笑う番だった。
「どうかした?」
「なんでもない」
春人といると、どうしてこんなにリラックスしていられるんだろう。
相手の顔色ととか機嫌をうかがわなくていいことが、自然体でいられることが、これほど幸せなことだとは思わなかった。