雪恋ふ花 -Snow Drop-
翌週の金曜日は、いつものバスが運休のため、最寄駅から路線バスに乗った。
ナイターの営業開始の16時過ぎから滑り始める。
刻一刻と暮れなずむ山の風景は、日中とまた違って美しかった。
しばらく滑って、コースの上で休んでいる時だった。
突然打ちあがる花火。
「え? どうして花火?」
「今日、何の日か知ってる?」
「あ、ホワイトデー?」
「そう。ここのスキー場は、バレンタインとホワイトデーには特別イベントやってるんだ」
それを聞いた途端、珠の頭に浮かんだ小さな疑問。
もしかして、知ってたの?
だから、今日にしたの?
そんな都合のいいことを考え始める自分に、珠は首をふった。
そんなわけないのに。