雪恋ふ花 -Snow Drop-
「じゃあ、行くわ。4年間楽しかったよ。それから、信じないと思うけど、さっきのやつとは何でもない。おまえが今日も帰って来なかったら、耐えられそうになかったから、連れ込んだだけで、何もしてない」
「賢ちゃん……」
珠は玄関で靴を履いている背中に向かって、大きな声で叫んだ。
「ごめんね」
珠の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
これだけは言わなくては、きっと後悔する。
珠は玄関まで走っていった。
「賢ちゃん、今までありがとう」
賢が扉を閉める音を聞いて、珠は号泣した。
どれほどすれ違っていたんだろう。
もっと素直に気持ちをぶつければ良かった。