雪恋ふ花 -Snow Drop-

そして、気がつくと、春人にもらった写真集を抱えて、珠はそのままの格好で、家を飛び出していた。
泣きじゃくりながら走っていると、道行く人が何人も振り返って見たが、今はそんなことを気にする心の余裕はなかった。

2か月前に一度行ったきりの春人のマンションに、少し迷いながらたどり着いた。
震える手で、インターフォンを押す。


「はい」


少し硬い春人の声。


「珠です」

「ええっ?」


オートロックを解除した春人が、自分の部屋のドアーを開けて待っているのが見えた。
珠はそのまま、春人の胸に飛び込んだ。


「とにかく中に入って」

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